2010年2月アーカイブ

僕は本当に付き合ってるのだろうか。

何度も何度も考えてしまった。

ちょうどそんな時期にもう一つの事件が起こっていた。

とある日曜日のこと。野球部の試合に僕は行っていた。

中3の先輩たちもようやく引退してくれてやっと中2中心での試合なのだ。

僕は野球部の中では一番足が速く、力も一番。だけどフライをとるのが大の苦手だった。

そんな僕はレギュラーではなくベンチで出番を待っているという状態だった。

チームは2点差で負けていて終盤を迎えていた。

ランナーは2塁3塁と一打出れば同点逆転とビックチャンス。

打席には守備は上手いがバッティングはダメな奴。

監督は立ち上がり、代打を審判に要請。

僕の体は燃え上がっていた。緊張など感じる隙さえなく、頭の中はホームランのイメージしか湧いてこなかった。

「代打、山口」

監督の声が響き渡る。

why?

なぜなんだ。なぜ山口。なぜ一年を出す。

次の日の練習に僕の姿はなかった。

その次の日もその次の日も。

それから数日のこと。

僕はグランドに戻ってきた。野球部のグランドのすぐ隣にあるサッカーグランドに。

野球部の連中は目を丸くして僕を見てた。

why?

野球部で鍛えた下半身はすぐさまサッカー部活かされた。

僕は輝いていた。誰よりも輝きを放っていた。

第二の人生をのせたボールは大きく空へ舞い上がったんだ。

舞い上がりすぎたボールを追いかけグランドの隅にボールを取りに行くことも幸せだった。

あの時もそうだった。

勢い余ったボールはグランドの隅に転がって行った。

導かれるようにそのボールはブラスバンド部の練習場まで転がって行った。

ボールを追いかけるその先には彼女がいた。

学年一かわいくてフルートが得意な石原さん。

ボールを追いかけているのか、石原さんをめざして走ってるのかわからなかった。

その距離はどんどん縮まっていく。

なにを話せばいいのかわからない。ボールを取って練習の邪魔にならないように立ち去るのがベストなのか。

飛びつくのがベストなのか。

「今日、一緒に帰ろう」

彼女からの不意の問いかけだった。

これがベストだった。

今から14年前、Jリーグ発足の1年前の出来事。

 

 

 

あのクリスマスパーティーから2週間が過ぎた。

いつもと変わらない正月を迎え、そして過ごし、気づけばもう3学期を迎えていた。

この冬休みがどれだけあの事件を風化させているのか少し楽しみなところもあった。

いや、もしかしたら二人の関係は元に戻ってるのかもしれない。

それはそれでいいことだ。

とにかく早く二人に会ってみたかった。

先にあったのは石原さんのほうだった。

坂本君の友達でもある僕は他の男子がうらやましがるほど石原さんと普通に会話ができるようになっていた。

「おはよう」「おはよう」

 

まったく解らない。

 

やはり、坂本君を待とう。

待つこと3分、彼はこちらの質問を分かってたかのようにその答えを持ってきた。

いや、連れてきたというほうが正しいのかもしれない。

「おはよう」「おはよう ニヤッ」

 

なるほど。

 

中2の僕にデリカシーという言葉は存在していなかった。

僕は予感が確信に変わったとたん、石原さんの元へ走った。

「ふられたんだね。大丈夫?」

「でも元気そうだね」

次々出てくる僕からの言葉の暴力。

言葉の暴力はさらにエスカレートしていき、とうとう夜、彼女の家に電話をしてまでも続いた。

僕は彼女に何発浴びせたのだろう。そして、最後のとどめの一発。

 

「今後の告白するための練習していい?」

「いいよ」

「好きになったんだけど付き合ってくれませんか?」

「・・・いいよ」

 

「・・・・」

「・・・・」

 

くしくも、テニス部の女の誕生日の1月30日の出来事。

 

 

坂本君。ちょっと小柄だけど、笑顔がなかなかで、憎めないやつ。ちょっと悪ぶっててだけど女にやさしい。

野球部のエースで彼女は学年一かわいい石原さん。

 

でも、坂本君はひとりの女性でなくふたりの女性を好きになってしまった。

 

それを知ったのは文化祭も終わり、冬を迎えた12月。

坂本君について、僕と坂本君はアクセサリー屋に来ていた。

坂本君の手にはピアスとネックレス。

どちらを買うか迷ってるわけでなく、どちらをどっちにあげようか迷っている。

中2の僕にはありえないほどの大人の風景だった。

「さすが、坂本君」

そんな、言葉を言ったのか思ったのかはわからないが、とにかく興味シンシンだった。

結局、安いほうを石原さんにということで、大人買いは終了した。

 

それから、2週間後のクリスマスイブ、僕らはクラスの仲のいいメンバーと僕の家でワイワイするパーティーを開いていた。

もちろん、そこには坂本君はいない。でも、坂本君が新たに愛した女性はいる。

僕はもうドキドキしていた。

あのプレゼントはもらったのだろうか。石原さんとデートしていることをどう思っているのか。

聞きたいことが山のようにあった。

でも、彼女の表情はいつもと変わらず、さすがテニス部だけある明るい笑顔で場を楽しんでいた。

パーティーも中ごろになったころ、突然、扉があいた。

 

予定外の坂本君の登場である。

 

デートしているはずなのにwhy?

僕はすかさず

テニス部の笑顔を振りまいていた彼女を見た。

女の笑顔に変わってる。

 

「東京ラブストリー」にドキドキしていた18年前のクリスマスの出来事である。

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