2009年9月アーカイブ

高校野球部にとっての3回戦目の朝。

僕にとっての2回戦目の朝である。

僕はこの日、攻めた。

鮎川さんといつも一緒に来ている女の子から入っていこうと思った。

その女の子が誰だったのか、どんな顔をしてたのか、今現在の僕の記憶には全くない。

ただ、その子を利用して鮎川さんへ話しかけれることができたことの記憶がある。

入り込みは自分が想像してたよりスムーズだった。

気がつけば、鮎川さんと記憶にない女の子の間に僕がいるという形をつくっていた。

そして、緊張全開にも関わらす、僕は話しまくった。

高校の先輩たちがグランドで頑張っている。

僕はスタンドで頑張っている。

でも、しっかり、僕も応援していた。勝ってくれないと僕も次に進めないからである。

そんな、自分勝手な応援のかいもあり、高校野球部はまた勝ってしまった。それも最終回に逆転するというドラマチックに勝ってくれた。

鮎川さんは野球部の勝利を喜んだ。そのうれしそうな顔がかわいくてしかたがなっかた。

そのニヤついた自分の顔を隠すためにも僕も野球部の勝利を喜んだ。

その日の帰り、坂本君がナイスな提案をしてくれた。

みんなでボーリングに行こうというのだ。

もちろん、僕は鮎川さんを誘った。鮎川さんもそれを快く受けてくれた。

(「ナイス、坂本君」)

ボーリングをしたり、ゲームをしたり、ジュースを飲んだり、楽しかった。

どんどん、自分が大人の階段を上っている気がした。

そして、気がつけば、僕と鮎川さんは一緒に遊んでいる。

そして、人生初のカラオケへ鮎川さんを誘った。

当時は今のようなカラオケボックスも少なく、ボーリング場に畳一枚分の個室があり、その中にカラオケの機械があって

100円で一曲歌うという形だった。

二人っきりになりたくて入ってはみたものの、人前で歌うことなんて初めてだし、それもいきなり、好きな人の前なんて。

男になってやる、そう心に誓い、僕は100円を投入した。

 

♪あ~夏休み/TUBE

鮎川まどか、彼女の存在は凄まじかった。

タイプもタイプ、どストライク、三球三振であった。

1か月前は川口さんしか見えない僕だったけど、彼女を発見した僕には彼女以外の女性が全て見えなくなっていた。

吸い込まれそうな白い肌、中2とは思えない大人びた体型、薄い唇に大きくはないけどしっかりとした目元。

どれをとっても完璧、パーフェクトだった。

初戦を勝ち抜いた高校野球部はもちろん次の試合もあるわけで、初戦から二日後の第二回戦にまた彼女が来るかワクワク

して仕方がなかった。

その二回戦の日がやってきた。

僕は初戦と同様に坂本君と石原さんの3歩後ろを歩いて球状に向かっていた。

スタンドにつくと僕の目線はグランドには見向きもせず、ひたすら鮎川さんを探していた。

「いたっっ!!」

二日前よりかわいくなってる鮎川さんを発見した。

野球を見に来る鮎川さん。鮎川さんを見に来る僕。

この不思議なトライアングルにより僕の応援もおのずと大きくなる。

勝てば勝つだけ鮎川さんに会える。

僕の応援が通じたのか高校野球部は奇跡的な逆転勝利。10年ぶりに3回戦にコマを進めた。

それと同時に僕の2回戦がプレイボール。

 

 

みなさん、おまたせいたしました。

前回までのあらすじ

神童と呼ばれていた小学時代。

コバンザメのような中学1年生。

覚醒始まる中学2生、春。

川口さんに恋をした、夏。

恋が終わった、夏。

 

第2部スタートです。

僕はなぜか野球部にいた。

けっして野球が嫌いでも苦手でもない。ただ、坂本君がいたから。野球部にいた。

でも、野球部の坂本君もさすがの坂本君だった。

ピッチャーで汗を流し、練習が終われば、美人の石原さんが汗を拭いてくれる。

まさに、真のエースだった。

僕の学校は県でも指折りの進学校であり、中学高校とエレベーター式に進学できる。

それもあり、高校の野球部が地区大会に出る際には中学野球部の僕たちとブラスバンド部は必ず野球場まで応援に行くのだ。

野球場までは大体、電車で30分と徒歩で20分かかる。

坂本君とたわいもない話をしながら行くにちょうどいい時間である。

しかし、僕はミスを犯してしまった。

坂本君の隣にはあの石原さんがベッタリいる。

なぜなら、石原さんはブラスバンド部だったんだ。

僕の計画は大きく崩れた。

坂本君と石原さんの3歩後ろを50分間つけて歩き、話もロクにしたことのない奴の隣で2時間以上応援する。

「かっ飛ばせ!!」(「早く負けてくれ」)と願っていた。

邪念がばれたのか弱いはずの我が高校野球部が一回戦を勝ってしまった。

また、地獄の50分+2時間を味わうのかと坂本君と石原さんの3歩後ろ歩いて帰っていく。

(「つまらん」)(「辞めようかな」)

こんなことを考えるにはちょうどいい時間である。

「すごかったね」「かっこよかったね」

僕の邪念を邪魔する女の声が前ではなく、後ろから聞こえる。

夏服のセーラー服に白い野球帽を深々とかぶった女性。

鮎川まどかの登場である。

(「プレイボール」)

僕の心のサイレンが高々と鳴り響いた。

 

3年後彼女についたあだ名が「魔性の鮎川」なんて

知るはずもない18年前の夏の出来事。

 

 

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