January 2013Archive

 以前ご紹介した「佐賀にとろけるツアー」に参加された高知県内の地域活性化NPOメンバー、県の観光担当職員や観光連盟、いの町の観光協会職員等、観光まちづくりに関わる方々高知県の方々からお誘いをいただき、10月6~8日の2泊3日で高知の観光まちづくりを学ぶツアーに参加させてもらった。このツアーの中では、朝どれの「日戻り鰹」を求める県内外のお客さんで賑わう中土佐町・大正市場や、いの町での手漉き和紙づくりや仁淀川でのカヌー体験、高知市の日曜市やひろめ市場来訪など、様々なメニューがあったのだが、紙幅の関係もあるので、その中で高知県の中山間地域活性化の取組について紹介したい。

 高知県は高齢化率が28.8%で全国3位、平成17年から平成22年の5年間での人口減少率が4%(約5万人減少)でこちらも3位と、全国的に見ても厳しい状況にある。国立社会保障・人口問題研究所が提供している将来人口推計データ(平成22年国勢調査をもとに推計)を見ると、高齢化率の全国平均値が高知県と同レベルになるのは平成31年であり、単純に高齢化率だけを見れば、高知県は全国より10年進んだ状況にある。その中でも中山間地域は特に疲弊が進んでいる。

 今回は、そうした中山間地域の一つである本山町でのまちづくりについて報告したい。


●足元の資源を使って事業化し、雇用を創出する民間発の取り組み
①ばうむ合同会社
 高知県本山町は、平成24年住民基本台帳の人口が3,889人、高齢化率は40.9%、四国山脈の中央部に位置し、約9割が急傾斜の山林で、集落・耕地は標高250m~740mの間に点在している。その中間部を吉野川が東流する。

 本山町に入って、まず「ばうむ合同会社」に向かった。案内していただいたのは、代表社員である藤川豊文さん。藤川さんは本山町で生まれ育ち、関東の建設会社に勤務した後、Uターンで本山町に戻り家業を継いだ。そして、平成17年に商工会青年部の有志でばうむ合同会社を立ち上げ、過疎化する地域における人材育成事業、地域資源を活用した新たな産業づくりに取り組んでおられる。具体的に、人材育成においては、慶応大学大学院経営管理研究科と連携し、インターネットを活用した双方向のテレビ会議システムを活用し、起業家育成講座を実施している。藤川さん曰く「変化の早い時代に対応すべく、小さく、機動力のある会社を30年後に30社立ち上げ、300人雇用したい」。実際に、現在は小学校向けの机・椅子や「もくレース」という木工芸品の販売で、平成23年は3000万円を売り上げ、4名を雇用している。また、近いうちに地元産米を活用した焼酎を取り扱う企業を立ち上げるそうだ。「100年先、200年先を見据えて、自然と共生できる、持続可能な産業をつくりたい。まずは林業を再構築したい。」とおっしゃっていた。

ばうむの主力商品である「もくレース」。社員の女性が趣味としていたレースのデザインを取り入れた木製コースターを作ったところ、大人気に
写真 (3).JPG




























②米米ハート
 その次に向かったのは、「米米ハート」という、米粉のパンを製造・販売するパン屋さんである。このお店は、本山町の真辺由香さんが代表を務める女性グループが運営しており、平成21年にオープンして今年で4年目。パン屋の他、米粉ケーキ専門店も平成24年3月にオープンした。2店舗で正社員5名、パート13名を雇用している。代表の真辺さんは、底抜けに明るい女性で、ニコニコと笑いながら、米米ハート設立の経緯や職場の様子をお話してくれた。

 元々は森林組合の事務職員で、お菓子やパン作りは趣味だったそうだが、地元のJA土佐れいほくが平成21年に、国の6次産業化の補助事業で米粉のブランド化に取り組み、米粉の製粉機を導入するのに合わせて森林組合を退職し、パンづくりを始められた。オープン当時の米粉パンのレパートリーは70種類だったのが、毎月新しいものを最低一個作っていたら、現在は230種類。私は「ナスの照り焼きバーガー」という珍しいパンを頂いたが、和風の味付けで、米粉のもっちりしたパンとよく合う。「オープンしたてのころ、病気にかかってしまって2年間闘病生活。一か八かで手術をして、今ではすっかり元気になりました。毎日が楽しくってしょうがないですよ」と語る真辺さん。笑顔が絶えない明るい職場だそうで、スタッフはすべて女性。

 過疎化の中、雇用の場は限られており、家庭の事情を考慮しながら勤務時間を確保することは簡単なことでは無いが、農業や子育て、介護など、個々の事情に合わせてシフト可能な、女性にとって働きやすい職場環境をつくっている。真辺さんは「積極的に地元のものを使って、地元の女性が考えたメニューを親しんでもらうことで、地域と一緒に成長したい」とおっしゃっていた。藤川さんと同様、町の将来について危機感を持ちながらも、「地域のものを使って」「地域とともに」「地域に雇用を」という思いが言葉の端々から感じられた。

米米ハートにて、ツアー参加者と談笑する代表の真辺さん(右端)。服装も、表情も、話し方も、とても明るい方だった
写真 (2).JPG






















●行政の中山間地域支援の取り組み
①地域支援企画員
 こうした、中山間地域の民間発の動きに対する行政のサポートとして、印象的であったのが、地域支援企画員と集落活動センターであった。

 高知県は平成16年から、地域づくり支援課内に「地域支援企画員」というチームを立ち上げた。県庁職員が地域支援企画員として各市町村に1〜2名ずつ派遣され、市町村の役場内にデスクを設け、週5日常駐するかたちで勤務している。この地域づくり支援課は約60名からなる体制であり、県と市町村の連絡調整のパイプ役を担うとともに、地域にあった取り組みを一緒に考え、活動していくキーマンとなっている。   

 今回の視察ツアー中に、中土佐町、いの町、本山町の地域支援企画員の方々とお会いしたが、皆さん地元の自治体職員や住民の方々と打ち解けて、共に活動しておられ、「まちづくりにより深く関わりたい県庁職員にとっては、天職です」と語る方もおられた。もちろん、支援員によって地域との相性や向き不向きはあるだろうが、この制度は総じて内外からの評価が高く、8年目を迎え、県外からの視察も多いそうだ。

②集落活動センター
 もう一つ印象的であったのが、中山間地域対策課の「集落活動センター」という事業。本山町内を流れる汗見川沿いには、6つの集落があり、平成24年4月時点で104世帯、216人の住民が暮らしている。この流域地域の高齢化率は59%と、高知県の中でも高齢化が進展している地域の一つだ。

 今回、この汗見川地区において廃校を利用した「集落活動センター汗見川」を視察した。汗見川地域では、平成11年に住民により「汗見川活性化推進委員会」という団体が組織され、様々な河川・森林の保全活動や廃校活用策の検討が行われてきた。そして、平成24年度に高知県中山間地域対策課の事業として集落活動センター推進事業という支援策が立ち上がるのに合わせて、平成24年3月から、汗見川活性化推進委員会が中心となって、運営方法や事業内容の検討を行い、6月に集落活動センター汗見川がオープンした。

 この活動内容としては、薬草の栽培や加工品の製造・販売(地域のスーパーの一番良い場所を確保してもらい販売)、「森のおきゃく」というユニークなツーリズムに取り組んでおられ、集落住民216名のうち40名以上が関わっているという。「おきゃく」とは土佐弁で宴会のことで、献杯と返杯を繰り返すのが土佐流。「しばてんおどり」という本山町伝統のコミカルな動きの踊りを踊りながら、地元の方々とおきゃくをするのが「森のおきゃく」である。私も高知市内で本山町スタイルのおきゃくを体験したが、しばてん踊りで大いに盛り上がった。

 このように、町内での企業、住民団体主体の動きに対して、外部の教育機関や国事業も取り入れながら、町と県が協力し、バックアップする体制が組まれている。

集落活動センター汗見川
写真あせみがわ.JPG



















集落活動センター汗見川にて。お話をお聞きしたのは、地元役場職員の大西千之さん、汗見川活性化推進委員会の山下文一会長
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●高知と佐賀が地域間交流をしながら、学び合う関係性へ
 高知県、本山町の取り組みから学ぶことは大変多かった。高齢化・過疎化への対応という意味では、高知は危機的状況にある分、住民、企業、行政がタッグを組んだ最先端の取組が試行されている。

 私がまちづくりに関わらせていただいている佐賀県富士町は、人口、標高、平均気温、面積などなど、本山町とほぼ同じ値である。ただ違う点は、高齢化が本山町の方が3ポイント程高いということと、福岡市という九州最大のマーケットに隣接しているということ。その分、危機感は本山町の方が高いように感じるし、地域活性化の取り組みも進んでいる。そこで、12月18日に、ばうむ合同会社の藤川さん、米米ハートの真辺さんをお呼びし、富士町で開催されているまちづくり勉強会「元気塾」(富士支所総務課主催)の講師を務めていただくことになった。こうした二地域間交流を進めていくことで、若干の消費と、多くの学びを互いに得ることができればと思う。

 勉強会の後は、富士町から本山町に有志で視察ツアーに行こうか、という話も出ている。高知と佐賀は薩長土肥の間柄。この地域間交流を継続し、学び合いながら、互いのまちづくりがレベルアップしていけばいいと思っている。

手ぬぐいをかぶって「しばてんおどり」を踊りながら、献杯&返杯のおきゃく体験。高知の夜は長い
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本山町での各取組に対する、県、町、関係団体の支援
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