June 2012Archive

●佐賀にとろけるツアーとは
 数年前から、旅先(着地側)の観光事業者や、地域を知り尽くした住民・企業が観光商品を開発し、地元ならではの"深い"サービスを提供する「着地型観光」のスキームが各地で次々に展開されてきた。この着地型観光についての考察は、以前の記事でも触れた。しかし近年、手軽な情報発信・コミュニケーションツールとしてソーシャルメディアが普及するに連れ、思いを同じくする人同士がつながることが容易になり、コミュニケーション・コラボレーションに必要な様々なコストが低下し、この動きが加速されていると感じる。その1つとして、佐賀県では、「佐賀にとろけるツアー」という活動がある。この取り組みについてご紹介したい。


佐賀にとろけるツアーの流れ
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●ツアーの準備はfacebookグループでのやりとりで、幹事が顔を合わせてのミーティングは1回のみ
 昨年9月末頃の事。佐賀県事業「富士町情報化ビレッジ形成プロジェクト」の一貫として「地域づくりフォーラム」を企画するにあたって、パネラーとして佐賀県の森本登志男最高情報統括監(以下森本CIO)ご本人に加え、そのお知り合いである勝屋久事務所の勝屋久さん、本荘事務所の本荘修二さん、(NPO)とさはちきんねっとの川村晶子さんにパネラーとして登壇の依頼をお願いしたい旨を森本CIOにご提案したところ、「実はパネラーの面々としては、同じ事を考えていた。加えて、アジア・メディア・プロモーションの渡邊竜一さんにご登壇いただくとともに、フォーラムの前後にプレミアムなおもてなしの、佐賀にとろけてもらうツアーを組み、ネットワークの広い勝屋さんのお仲間の方々にも来てもらってはどうか」という一言で、佐賀にとろけるツアーの企画が走りだした。

 早速、森本CIOが10月中旬に「佐賀にとろける2泊3日ツアー創生」という非公開のfacebook(以下FB)グループを立ち上げ、佐賀県内の異業種交流会である「佐賀会」の幹事の方々や有田町嬉野市佐賀市のキーマンなどからなる10人のメンバーが加わった。そして、グループのウォール上で、「パワースポットとして泉山磁石場はいかがでしょ?」「それは必須ですね」といった具合でアイデアが次々に出され、行程が徐々に組み上がっていった。11月上旬からは幹事が増え、行程表をgoogleスプレッドシート上で、リアルタイムに複数の人が更新していくことで、web上での協働が加速された。

 徐々にグループのメンバーは増加し、主婦や学生、団体職員、行政マンなど様々な職種・年代からなる総勢24名のグループになり、12月2日~4日にまたがる「佐賀にとろけるツアー」が完成した。第1回目のとろけるツアー前にこの24名全員が一同に介したことは一度もない。また、6,7人規模での幹事の打ち合わせも、一度だけだったと思う。ウォール上のファシリテーター役であった中村さんや、佐賀のFB会を盛り上げる濱田さん、川崎さん、金ケ江さん達とは、何度もFBのメッセージ等でやりとりをしていたが、結局顔を合わせたのはツアーの初日。「初対面のような気がしませんねー」という言葉を掛け合った。


●特徴1:地域にネットワークを持つ方々だからこそのおもてなし
 1回ツアーの参加者は、東京、鯖江、高知、福岡などから17名であった。なお、私も工程表原案の作成や全行程のおもてなしに加わらせていただいた。(いずれは私の出身地である鳥栖市でもとろけツアーをやりたい!)

第1回とろけるツアー行程(2011)
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地域づくりフォーラムの一コマ。パネラーの森本CIO、勝屋さん、本荘さん、川村さん、渡邊さん、ふじねっとメンバーと。勝屋さんのブログより。
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やってみたかった、温泉卓球。旅館大村屋さんにて。勝屋さんのブログより。
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有田工業高校にて。Youtubeなどに「開局!選挙チャンネル」の動画があります。一見の価値ありです。吉永先生はじめ有工の皆様、ありがとうございました。勝屋さんのブログより。
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 これらのひとつひとつの行程は、現地のことを知り尽くした地元の人から出されたアイデアなので、日本酒「鍋島」で有名な富久千代酒造の見学と飯盛社長による説明・試飲、肥前夢街道の皆様によるガマの油売りなどのパフォーマンス、大村屋さんでのスリッパ温泉卓球、古湯でのバルーン係留、小城市の天山酒造見学や普茶料理など、佐賀に住んでいたとしても滅多に味わえない、体験できないものばかり。特に、全国高等学校デザイン選手権大会で優勝した有田工業高校の生徒による「選挙チャンネル」の生プレゼンは素晴らしく、涙する人もちらほら。地方に行けば行くほど、旧来の縁故がある人で無ければ地域を動かすことは困難だが、このツアーでは、それが可能である。
(余談だが、幹事グループの一部は、「有田工業高校の優勝プレゼンを生で見たい」という声の高まりにこたえて、やはり一度も実際には集まらないまま、ホールに80人を集め、他2校を加えた日本一の評価を受けた高校生のプレゼンを見る会をfacebookで打ち合わせるだけで実現した)

 
特徴2:ツアー終了後もFBグループ上で交流が継続、通いあう関係へ
 また、ツアー終了後、参加者側とおもてなしスタッフの総勢51名からなる「佐賀にとろけるツアー」というFBグループが立ち上げられ、ツアーの写真や感想を共有しあった。このFBグループ内での交流は今も継続しており、また参加者がFB上の友人として繋がっている。このツアーがきっかけで交流が継続し、とろけるツアー第二弾の展開(佐賀県内の女性が、女性客をおもてなしするというコンセプト)につながり、富士町でのフォーラムのパネラーを務めていただいた川村さんのネットワークから、高知県の観光関係者やNPOの方々が佐賀を来訪された。

第2回とろけるツアー行程(2012)
名称未設定-2.jpg











初日の夜、FB交流会の様子。小川さん撮影。
FB交流会の様子。.jpg




















2日目のガタリンピックへ向け、出発するところ。濱田さん撮影。
2日目のガタリンピックへ向け、出発するところ。濱田さんの写真借用。.jpg






















佐賀新聞に載った、高知からの参加者+江崎さん。矢野さん撮影。
佐賀新聞に載った、高知からの参加者+江崎さん。矢野さんの写真借用。.jpg






















第2回とろけるツアー。豊洋荘にて、有明海をバックに。いい写真。川崎さん撮影。
豊洋荘.jpg




















 

特徴3:ツアー参加者、もてなし側からのクチコミの情報発信
 もてなし側のスタッフは、ソーシャルメディアに慣れた方々。また参加者の方々はIT系の経営者や市民活動を展開されている方々、投資家の方々など、情報発信力が強い方ばかりで、行く先々で「佐賀のパワースポット 巨石パーク なう!」「今日、富士町でオモロいイベントがあるから、きてね!」といったツイートをされていた。また、勝屋さん本荘さん竹部さんなど参加者の方々にツアー後、ブログに書いていただいた。
 生活者はマスメディアからの情報よりもソーシャルメディア等によるクチコミを信頼し、行動に移すという調査結果が多々あるなか、このツアーはこうしたクチコミを流通させる起点となる。

 この他、とろけるツアーの特徴には、次のようなものがある。
  • dropbox、サイボウズlive、salesforce等のインターネット上の協働ツールを活用し、遠隔地でコラボしながらのプランニングにより、ミーティングコストを低減
  • 観光客ともコミュニケーションしながら、臨機応変のプログラム対応が可能。
  • 現地の幹事や、おもてなしの仕掛け人、受け入れる商店や団体の方々が、地元の資源が県外の人に大きな評価を受けることで、地元に対する自信と愛着が生まれる。


●今後は、組織化、旅行業者との連携が課題
 一方で課題もある。今は、友人が友人をおもてなしするツアーということで、参加者からは実費(おもてなし側のスタッフの人件費はもちろんない)を頂いた。ただ、宿泊と飲食がセットになった募集型企画旅行を何度も催行すると、旅行業であると指導を受ける可能性がある。今後活動を継続するに当たっては旅行会社との連携は必須であり、旅行会社の商品化や、連携の可能性について探りたいと考えている(第三種旅行業は、旅行業務取扱管理者の手配や供託金の準備など依然ハードルが高い)。

 また、第1回、2回目は森本CIOを起点としたネットワークからの参加者であり、プロジェクトマネジメントの面でも、その推進力や説得力に頼るところが大きい。今後、取り組みを継続・拡大していくためには、組織の理念を共有したり、運営体制・各人の役割分担を明確化したりと組織としての体制を確立していく必要がある。


●佐賀にとろけるツアーは、訪れた方々の心をとろけさせるツアー
 第1回、2回のとろけるツアーでは、各地域の担当者が、自分が自信を持ってオススメする施設や景観、食、人とのふれあいを紹介し、来訪者と地元のもてなし側のスタッフが共に楽しみ、心を通わせ、交流する、素晴らしい日々となった。そして、第2回の参加者であった高知県の大石さんが、「景色も食も素晴らしかったが、何よりも人の優しさ、もてなしに感動した」とおっしゃっていただいた。その言葉に、第2回ツアーの中心的存在の川崎さん、彌吉さん、高橋さんらが涙するシーンが感動的であった。富士山や京都の寺社仏閣のように、唯一無二の観光資源は無いかもしれないが、こうしたおもてなしをして、その後もICTを活用して交流を継続することで、友人として何度も通い合う関係づくりができると思う。


●私個人としての、とろけるツアーの今後の展望
 佐賀にとろけるツアーは、私個人の地域づくり活動として関わらせていただいているが、今後益々進むであろう観光におけるソーシャルメディアの活用、都市住民と観光地がともに作り上げる観光商品づくりの貴重な実践の場だと思っている。

 とろけるツアーは、市民活動をされている方、観光事業者の方々、NPO関係者、行政職員の方々など、様々な方のコラボレーションによって成り立っているが、この活動の個人的な展望を考えてみた。
 まず、これまで行政が立ち上げてきた観光協会、観光連盟等のHPは、一定の集客力がある。このHP内に、意見交換・商品開発のプラットフォームとなるFBページ(立ち上げのみを行政側で準備)のリンクを張り、FBページの運営は地元住民、郷土愛のある出身者、また外に住むファン、各分野のマニアの方々などにお任せし、そこでのコミュニケーションから生まれた観光商品をフリーの知財として自由に楽しんでもらう、あるいは旅行代理店に販売してもらうようなスキームがあれば良いと考えている。そして行政側は、そこでの意見交換や、実際にそこで生まれたツアーを体験した人々のFBやtwitterの書き込み(特定キーワード)を収集、分析し、もてなしの向上に活かすような取り組みがあれば、と考えているが、どうだろう。興味のある方は、一緒にやりませんか。
 

ソーシャルメディアを活用した観光の展開イメージ
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