October 2011Archive

 自転車は、私の趣味の一つである。これまでマウンテンバイクや小径車に乗っていたが、今年の8月、友人からロードバイクを譲り受けた。そこでこの夏、友人達としまなみ海道ツアーと錦江湾一周ツアーに行ってきた。


●しまなみ海道は、ロケーション、ハード、サービスともにハイレベル
 西瀬戸自動車道、通称「しまなみ海道」は、広島県尾道市の西瀬戸尾道ICを起点とし、向島・因島・生口島・大三島・伯方島・大島などを経て愛媛県今治市の今治ICに至る有料道路である。しまなみ海道は様々なメディアで紹介されている日本有数のサイクリングコースであり、日経新聞土曜版の「なんでもランキング」でも、おすすめのサイクリングコースランキング1位に選ばれている。
 私がしまなみ海道を走ったのは8月20日。朝8時頃、尾道を出発し、途中で直売所や商店街、博物館等に寄り道しながら、午後5時頃に愛媛県今治市へ到着した。尾道の宿泊施設を出発してから今治市の宿泊施設に到着するまでの総走行距離は約90kmであった。
 私が感じたしまなみ海道の魅力は、まずはそのロケーションである。大小様々な島々が連なる瀬戸内の景観、漁村の営み、斜面に広がる田畑や柑橘類の畑。三連つり橋の来島海峡大橋、塔から斜めに張ったケーブルで橋を支える斜張橋の多々羅大橋など眼下に海を眺めながら走るコースは「空中サイクリング」と言われる所以である。
 また、ハード面の整備状況にも感心した。それぞれの橋には自転車専用道が完備されており、一般道から橋に出入りするための取り付け道が自転車専用のループ橋であったりする。そして、尾道から今治に至るまでの道路には十分な広さの自転車専用レーンが設けてあり、路面の凹凸やタイヤがはまりそうな側溝も無い。一部分、自転車道が歩道上に設けられている部分もあるのだが、車道から歩道に入る際の段差が非常になめらかに作られており、ストレスを全く感じない。
 そして、ソフト面も充実している。例えば、生口島の「しおまち商店街」は、入り口のゲートに「サイクリストオアシス」という看板を掲げており、自転車愛好家達を迎えている。この商店街に入ると、サイクルジャージに身を包み、高価な自転車に乗った方々がしばし自転車を停め、ローストチキンをほおばっていた。さらに、尾道から今治までの間には、レンタル・相互乗り捨てが可能なサイクルターミナルが10箇所設置されており、これらは周辺自治体が管理・運営している。加えて、サインやマップも充実している。また、「シクロツーリズムしまなみ」というNPO法人が現地発着のガイド付き自転車ツアーを展開している。
 このように、しまなみ海道は、さすが聖地だけあってロケーション、ハードと、その上に展開されるソフトが渾然一体となってサイクリストを迎えている。
 しまなみ海道開通前(1998年)の今治市への観光客は314万人であったのが、開通後は約500万人に増加している。しまなみ海道の整備をきっかけに、地域住民、事業者、地方自治体が自転車観光客にターゲットを見据えた取り組みを一体的に進めた効果が現れている。


友人達としまなみ海道(因島大橋)を疾走!先頭がワタクシ(^^;)
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しおまち商店街のゲート
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●大隅半島のサイクリングツアーの可能性を探る
 さて、話題は九州へ。今年3月12日に九州新幹線が全線開通して約半年が経過した。鹿児島県によると、7月の同県への宿泊観光客は前年度比23.5%増加している。また、新幹線の終着駅である鹿児島中央駅と指宿駅を結ぶ観光特急「指宿のたまて箱号」は乗車率が95%と、ほぼ満席が続く状況であり、鹿児島市周辺ならびに薩摩半島への恩恵は大きい。しかし、大隅半島へと目を転じると、新幹線開通の波及効果は対岸と比較して大きなものとは言えない。県が7,000万円の予算を投じ、大隅半島への宿泊観光客に対して24時間分のレンタカー利用料金を全額補助するキャンペーンを実施しているものの、その効果については地元事業者から疑問の声が挙がっている。
 そのような状況下、3月下旬から7月にかけて雪丸君と私は南大隅町地域経済活性化協議会からの委託を受け、観光資源掘り起こしと商品開発のためのワークショップを3回開催した。このワークショップには、毎回30名以上の町民が参加されていたのだが、その中で、地元の方々から錦江湾沿いの雄大な自然景観を楽しむことができるサイクリングツアーやトライアスロン大会の誘致に関する意見が挙がっていた。世の中の健康志向・環境効率性への志向を勘案しても、サイクリストをターゲットとしたツーリズムへの需要はまだ伸びる余地はある。ならば一度試行してみようということで、大学時代にサイクリングサークルで全国を回っていた友人I氏と雪丸君、そして私の三人でモニターツアーを企画したのであった。
 鹿児島へと向かったのは、しまなみ海道に行った翌週8月27日であった。朝7時過ぎに輪行バッグに自転車を詰め、九州新幹線に乗って博多駅を出発し、1時間半後に鹿児島中央駅に到着。そこから鴨池港まで自転車で30分ほど走り、フェリーで垂水港へと向かった。そして垂水から佐多岬までの約70kmは、自転車での旅である。途中で、鹿屋のカンパチを堪能し、右手に桜島や開聞岳の雄大な自然を楽しみ、直売所に立ち寄りながら南大隅町役場付近に到着。ここまでは楽しいツーリングであったが、南大隅町内の旧佐多町に入ってからは急なアップダウンが続いた。佐多支所(旧佐多町役場)付近から歯を食いしばって必死にペダルを漕ぐこと1時間半。夕方6時半頃、やっとのことで本土最南端の民宿「なぎさ」に到着した。ここで我々を出迎えたのは、漁師でもあるご主人が自ら仕留めた石鯛と伊勢エビであった。その美味しいこと。地元大隅半島の芋焼酎をいただきながら、疲れを癒した。
 夜が明けて28日の朝6時頃、民宿を出発して佐多岬へと徒歩で向かった。民宿から大隅半島の先端部まで地元の方から教えて頂いた獣道を30分程度歩き、佐多岬からの日の出を拝んだ。この辺りにはソテツが群生しており、南国情緒たっぷりであった。ニューデリーやカイロと同じ北緯に位置するのだから、それもそのはず。1871年に設計された白い灯台の後ろから登る朝日は雄大な景観であった。しかし、岬先端部に岩崎グループの廃墟があるのは残念。佐多岬一帯は岩崎グループが所有しているのだが、国立公園内であり規制が厳しいことや、今後の整備に多額の費用が必要であると見込まれることなどから、今後、投資をする計画はないそうである。施設の改装までは必要ないとしても、防犯防災の観点からも、せめてこれらの施設を撤去してはどうかと思う。
 大隅半島ツーリングの見所は、その独特の景観であった。一帯は2万数千年前の火山噴火により形成されたカルデラであるため、地形は山が急な崖となって落ち込み、急斜面に造られた棚田のすぐ下が海となっている。海風を体全体で感じ、山間部の原生林、山から海の間の田園風景、そして海の向こうの開聞岳を一望しながら走ることができるこの環境は、大隅半島ツーリングの醍醐味であろう。それに加えて、南大隅町には競輪場のような自転車バンクがある。私もバンクを走ってみたのだが、端から見るよりも壁がそそり立っていて恐怖を感じる。しかし、自転車好きの人の中には一度は走ってみたいと思う人が多いのではないだろうか。
 朝10時過ぎにバンクを走った後、大隅半島の根占港から薩摩半島の山川港へフェリーで渡り、自転車で指宿まで移動。指宿で砂蒸し風呂に入った後、観光特急「指宿のたまて箱」号に乗って鹿児島中央駅へ。その後、新幹線で博多へ向かい、19時頃に博多駅に帰着した。


●「錦江湾一周サイクリングツアー」は福岡からの一泊二日の旅にピッタリ
 鹿児島ならではの農畜水産物や焼酎、温泉などの土地の魅力を楽しみながら走る「錦江湾一周ツアー」は、自転車という乗り物を使うからこそ、土地の風土、言葉、薫りを体全体で感じることができる内容であり、福岡からの一泊二日ツーリングコースにぴったりだと思う。健脚の方であれば、鹿児島市からフェリーで桜島に渡り、ゴツゴツした火山岩を間近で見ることができる「溶岩ロード」を起点に大隅半島を南下、そして佐多岬周辺で宿泊。次の日は薩摩半島を頴娃街道に沿って北上するコースがオススメ。
 錦江湾一周ルートは、自転車観光ルートとして先に述べたような大きなポテンシャルを持っていると思う。自転車レーン整備や凹凸の解消、サイン整備など、時間も予算もかかる整備は徐々に進めていけば良いと思うが、自転車観光の情報発信、マップづくり、人々のもてなし意識の醸成、サイクリスト向けの食事・特産品メニュー開発など、比較的お金のかからないソフト面の取り組み、徐々に受け入れの環境をつくっていければ、南九州を代表するサイクリングコースになりうるポテンシャルがあると思う。ぜひ、しまなみ海道のように官民、地域一体となってターゲットを見据えた観光地域づくりを行って頂きたいと思う。


●サイクリストはよく飲み、よく食べる観光客
 サイクリストは体が資本なので、よく飲み、よく食べる観光客である。また、疲れた体を癒すために宿泊を伴うことが多い。加えて、周りの自転車好きを見渡しても、好きなことには投資をいとわない、消費性向が高くアクティブな人が多い。さらには、レースなどの大会を誘致できれば、愛着を持って毎年訪れる観光客になってくれる。地域の観光事業者からすると、なかなか有望な客層なのではないだろうか。
 自転車まちづくりは私の趣味と仕事がクロスオーバーする部分であり、今回の南大隅町のように、観光商品開発の意見を述べさせて頂く仕事は大変ありがたい機会であった。この分野には、これからも関心を持ちつづけていきたいし、仕事で訪れる様々なまちを自転車で走って、そのまちの雰囲気を肌で感じていきたいと思う。


南大隅町に入ってからは、山、里、海の多様な風景を楽しむことができる
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本土最南端の民宿にて、石鯛や伊勢エビなど、大隅の海の幸をいただいた
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佐多岬に登る朝日
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自転車バンクは誰でも走ることができる
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