July 2011Archive

 佐賀市富士町(以下富士町)は、北は福岡市に接しており、面積の8割を森林が占める山間地の過疎地域である。平成20年の人口は約4,500人(高齢化率3割)とピーク時の半分以下となっており、それにともなって事業所も減少している。
 そうした過疎地域において、町民の所得向上や交流人口の増加を目標とした「情報化ビレッジ形成プロジェクト」が始まって、1年9カ月が過ぎた。弊社は佐賀県情報課より、同プロジェクトの全体管理を受託しており、今年度末に事業が終了する。また、事業の推進のために、緊急雇用事業で4名を雇用し、「ふじねっと」というチームを組織し、これまで町内でパソコンやソーシャルメディアの使い方講座、情報化シンポジウム、12回のモニターツアー、特産品のオンライン販売などを行ってきた。
 そして6月1日に、富士町情報化ビレッジ形成プロジェクト事業の成果を、事業終了後も継続するべく、新法人を立ち上げた。その法人の名前は「株式会社インビル」。インビルとは、Information Network Village、すなわち情報化ビレッジの略称である。社長は、ふじねっとのチームリーダー、永田靖智さんが務め、私も経営陣の端くれとして社外からサポートさせていただいている。


●事業目標:農家の所得を60万円向上、プラッ トフォームの運営者の雇用創出(4名)
 ㈱インビルが行う事業は、特産品開発ならびに観光商品開発、そして、地域住民へのICT面のサポート、地域密着のシンクタンク事業である。これらの事業を展開することにより、参画していただける住民の方々の豊かさ(所得やにぎわい)を向上させることと、中山間地における雇用を創出することを目標としている。メインターゲットとしては福岡都市圏・佐賀市内の40~60代女性を想定している。
 中核事業のうち、特産品開発については『健康・簡便・安心』の志向性を持つ女性に対し、地域の高齢者手づくりの「山菜の煮物」の真空パック商品や菓子、惣菜を販売している。また、観光商品開発事業に関しては、健康・美容を前面に出したツアーや、農業体験などの着地型観光に取り組んでいる。全国各地の事例を見ると、韓国情報化村事業や馬路村の柚子関連商品のように、地域の名前を冠した特産品を販売することで地域の認知度が向上し、観光客の増加に成功した、あるいは逆に地域に観光客を呼び込み、土地柄、人柄を知ってもらった上で、継続的に物品を販売するなど、特産品と観光の相乗効果の創出に成功した地域はいくつもある。富士町においても、二つの中核事業を並行させることで、相乗効果を創り出したい。


●町に入って2年、周囲の反応が変わってきた
 町に入って2年足らず。当初は地元住民から活動への疑問、苦情等々色々言われ、心を痛めることもあったが、足繁く地域に通い、コミュニケーションをする中で信頼関係が生まれ、今では「残ってもらわんば困る」「協力しちゃーけん、頑張ろうや」「出資してもよかぞ」などと温かく心強い声をいただくようになった。また、地域の高齢者の方々とチームを組んで事業に取り組む体制をつくることができ、地域協議会の事務局や、JAから主力商品の米のブランド化を委託されるなど、町内での連携が生まれている。


●情報化ビレッジの推進は、発掘、連携、循環の プロセスを回すサイクル
 富士町において情報化ビレッジの地域経営モデルを検討し、一部実施を試みた結果、情報化ビレッジの運営・推進には、以下の3つの段階が存在すると考えている。第一段階の地域資源の「発掘」に関しては、求心力と危機感のあるリーダーの存在が重要。例えば「葉っぱビジネス」で有名な上勝町では横石さんがそれにあたる。富士町では前支所長と永田さんである。特に短期間で効果を出すことが求められる事業においては、地域内に既にネットワークを持ったリーダーが周囲を巻き込んでいかなければ、なかなかコトは動かない。
 そして、第二段階の「連携」においては、地域資源に対して、外部の専門家や地域内の他産業の連携などにより、地域資源をビジネス化する動きをつくる。この段階では、当初は経済的なインセンティブは働かないので、参加のモチベーションは信頼・共感といった心理的なインセンティブとなるが、ここでもリーダーの果たす役割が大きかった。富士町では、支所にお願いして立ち上げて頂いた地域協議会や各種勉強会等に、主要な利害関係者の方々に出席して頂き、地域内の連携を図った。また、ふじねっとのメンバーが取材や講座等で地域の方々とふれあい、信頼関係を構築するにつれ、活動に参加していただける方々が増えてきている。加えて、コミュニケーションのプラットフォームである地域ポータルサイト(ブログ、ツイッター、facebook)を活用して都市住民や顧客に地域資源の魅力を伝えている。
 さらに、その後第三段階として、例えば森林や農村の維持保全、健康改善等の価値感に共鳴した顧客が、地域に外部者としての気づきを与えてくれたり、実際に磨き上げの主体として参加する、「循環」の段階になる。富士町は、今この段階である。一部、ツイッターでイノシシの害についてつぶやくと、イノシシを嗜好する顧客属性に関する情報や、加工法を2時間、延べ40件以上のコメントでアドバイスをくれるということなどがあった。
 また、facebook内に富士町のfacebookページ(公開)と、富士町の活性化ページ(非公開)があり、前者は現在約80名、後者は約40名メンバーがいる。特に後者のコミュニティは、佐賀県最高情報統括官(CIO)をはじめとした情報課の方々も参加され、まちの活性化について活発に意見交換をしており、6月には古湯温泉の旅館でオフ会を開き、将来的なイベント開催についての企画を検討している。
 地域資源を活用した事業化プロセスがもし上手く回りだせば収益が生まれる。そうすれば、協力者も協力したいといった気持ちになるとともに、配当や謝礼といった経済的インセンティブを実現することが可能になる。また、次の資源を磨き上げる(事業化する)ための原資を得ることができるのではと考えているが、まだ富士町はこの段階には到達していない。
 現在、国土交通省が「国土の長期展望」を取りまとめ中であるが、その中間発表では、2050年までに人口が3000万人以上減少、三大都市圏への相対的な人口集中が進み、国土の大部分は過疎になるという予測がなされている。公共事業や企業誘致等の外部からの投資も限られる中で、過疎地域の将来は厳しい。自らの地域資源を見つめ直し、それを求める顧客を捜し出し、事業化する仕組みを如何につくりあげるか。引き続きチャレンジしていきたい。


発掘、連携、循環のサイクル
地域資源を活用した内発的な産業育成を考える.jpg

















4月の事務所びらきの様子。富士支所内から北山ダム湖畔の元うどん屋に、事務所を移動しました

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