September 2010Archive

●タイムバンキングとは
タイムバンキングとは、1時間のボランティア作業につき1クレジットが発行され、貯めたクレジットを別の社会サービスを受ける際や地域のレストラン、カフェ、ジム等で使用出来る仕組みである。例えばAさんが路地の清掃を1時間手伝うと、Aさんは1タイムクレジットというお金の替わりになるものをもらう。そして、その1タイムクレジットを使って、1時間語学を習うといったボランティアを受けることができる。この取り組みは1980年代にアメリカで始まり、現在は世界26 カ国で導入されている。
7月に、NPOグラウンドワーク福岡の方々がウェールズを訪問され、タイムバンキングの取り組みを視察されるということなので、私も参加させていただいた。


●地域の概要
南ウェールズ地方、ブラインガルー地域は、主要幹線道路から離れた渓谷地域に位置する中山間地である。かつては産炭地として栄え、地域の人口は16,000人であったが、1985年の炭鉱閉山後、環境汚染による住民の健康悪化、主要産業喪失による経済の悪化、若者による反社会的行為、インフラ未整備、主要建物の老朽化と閉鎖等の問題が山積している地域である。結果として、人口は7,500人に減少し、生産年齢人口のうち約3割が失業している。
この様な地域におけるコミュニティづくり、活性化などの手段として、2004年からタイムバンキングが実施されている。


●運営主体について
タイムバンキングを運営しているのは、クリエイション・ディベロップメント トラスト(以下CDT)という組織であり、チャリティオーガニゼーションとして2000年に設立されている。
今回の視察では、CDTのドーン・デービス所長をはじめ、数人のスタッフの方々に話を伺うことができた。
CDTのスタッフはフルタイムが13名、21名がパートタイムである。
タイムバンキングのための運営資金は宝くじ基金からの助成金、イベント時の協賛金を活用しており、運営資金は年間80,000ポンド(日本円で約1,200万円)である。
6月末時点でのタイムバンキング登録者数は720人。発足当初は、チラシを各戸に配布するなど、地道な活動をして会員獲得をしてきている。
このタイムバンキングの取り組みは、「タイムセンター」と呼ばれている施設を拠点として行われている。タイムセンターは劇場、託児所、トレーニングルーム、調理室、ダンススタジオ、音響設備、事務所設備を備えており、ここで定期的にイベントが開催されている。


●貨幣価値を意識させない仕組みづくり
ドーン所長の言葉で非常に印象に残っていることがある。一つはタイムクレジットであって貨幣ではないことから、できるだけ貨幣価値という意識を持たせないこと。
2つめは、使った時間を会員同士で共有できるようにすることであった。
タイムクレジットは地域通貨と同じように考えてしまいがちであるが、地域通貨はあくまで通貨という概念であるのに対して、タイムクレジットは「サービス」と「サービス」との交換であることを忘れないようにしないといけない。タイムクレジットの使用では、すぐ労働を貨幣価値に置き換えてしまう頭を切り換える必要がありそうだ。


●メンバー登録と活動開始
タイムバンキングを利用するためには、まずタイムセンターで、提供可能なサービスを登録申請する必要がある。その後、タイムブローカーによる面接(興味の対象、技術についての聞き取りおよびタイムバンキングの趣旨についての説明)を経て、登録の際に2クレジット受け取る。そして、活動リストから自分の取り組む奉仕活動を選び、1時間=1タイムクレジットとして活動時間分のタイムクレジットを受け取る、あるいはタイムクレジットを使用して自分の好きなイベント等に参加する。


●タイムクレジットを得るために
ブラインガルー地域では、タイムクレジットを得るために、住民間で以下の様なサービスがやりとりされている。
・コミュニティ活動のサポート
・買い物を手伝う
・クラスを教える
・ゴミ拾いをする
・子供のアフタースクールの面倒をみる
・お年寄りのサポート
・機器の修理・メンテナンス作業
・髪を切る
・パンフレット配布  等
また、CDTでは、ビンゴ大会等のイベントの開催、映画の上映、託児サービス、会議室貸出、OA機器利用といった機会を提供している。例えば3時間のイベントであれば3タイムクレジット、2時間の会議室利用であれば2タイムクレジットを支払う。ドーン所長はCDTとは別に収益事業を行う「オハナ・リミテット」という団体を立ち上げており、この団体が運営するクリエイションカフェでの食事・飲み物の割引(1タイムクレジット=1ポンドの割引)もある。ドーン所長は「タイムクレジットで食事代を賄うようなことすると、材料費も出なくカフェの経営にも影響するし、タイムバイキングの主旨にもあわないとのことで、あくまでも割引としている」とおしゃっていた。
ビンゴ大会は、会員全員が使用したタイムクレジットの合計が一定時間使用された時に行っている。これは会員同士でのタイムクレジットの使用を共有化するための仕掛けであり、非常に盛り上がるそうである。このように参加者が楽しく、コミュニティも図られるような仕掛けは本当に上手いと思う。是非、今回、上陽町で実施する社会実験でも取り入れたいと考えている。


●タイムバンキングの効果
CDTのドーン・デイビス所長によると、タイムバンキングを導入した結果、地域活動への参加促進や、コミュニティへの当事者意識が醸成されているのを感じているという。
また、ブラインガルー地域において37の地域活動グループが創出され、反社会的行為の減少、人口流出に歯止めがかかり、住み良さの向上により地価が上昇したとのこと。このタイムバンキングを取り入れた地域活動は、2008年英国都市再生協会(BURA) コミュニティ再生大賞を受賞するなど内外の評価も高い。


●タイムセンターは住民の活気に溢れている
我々がタイムセンターを訪れた日は平日であったのだが、タイムセンターで子供たちを対象としたイベントが開催されており、チェルノブイリからの小学生一行と地元の小学生がダンスを楽しそうに踊っていた。また、別のフロアでは、高齢者や若者が近々開催されるパレードで使用する飾りをボランティアで作成しており、我々もばっちり1時間ボランティアをさせて頂いた。たまに鼻声が聞こえてきて、非常に和やかな雰囲気であった。


●日本でも時間預託に取り組んでいる団体は44カ所ある
我が国でタイムバンキング(時間預託)という考え方が導入されたのは1970年代前半といわれており、30~40年以上の歴史がある。その後、一部の社会福祉協議会やNPOなどで使われていたが、広く普及しなかった。1990年代半ばごろから「さわやか福祉財団」の堀田さんの提唱により「ふれあい切符」として全国に普及したが、介護保険の導入によって高齢者を対象とした福祉型の時間預託制度は低迷したといわれている。
我が国の時間預託制度に詳しい公益財団法人さわやか福祉財団にお聞きすると、日本国内でも平成22年夏時点で44の団体が時間預託に取り組んでいる。国内では高齢者福祉分野での時間預託制度に取り組む団体が多く、高齢者の居場所づくりと、「周」と名付けられた時間通貨を使った相互扶助に取り組む静岡県袋井市の「NPO法人たすけあい遠州」や、ボランティア活動の記録を塗り絵手帳に付けていく取り組みを推進する「NPO法人さわやか徳島など」が活発に活動しているとのこと。


●日本におけるタイムバンキングの可能性
日本のムラ社会には、かつて結い、もやいといった相互扶助制度が存在していた。しかし、現代のコミュニティにおいては、核家族化や高齢化、人口減少などによって、その仕組みが壊れつつある。それは都市部だけでなく、中山間地も同様である。タイムバンキングは、現代人の生活において、相互扶助を復活させるきっかけ、互いの感謝の気持ちを表現・交換するツールとなる可能性を持っていると思う。
そのためには、タイムバンキングのセンターであり、地域の誰もが立ち寄れるような居場所と地域で熱心に取り組む人、タイムブローカーとなる人などの人材が必要である。
今年度、国交省からタイムバンキングの研究助成をいただいたので、高齢者福祉だけでなく、買い物代行、子どもの教育等、日常生活の様々な場面での利活用について、継続して研究していきたいと考えている。 

ブラインガルー地域の街並み
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タイムセンター。1800年代建築の、趣ある建物。
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中央の女性が、クリエイション・デベロップメント・トラスト所長のドーン・デービス氏
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タイムクレジット。1時間券、2時間券の二種類がある。
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ボランティア活動の様子。
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