古民家保存・活用の“型破り”な取り組み

地域文化が生き残るケースと、途絶えてしまうケース、その両者には、どのような違いがあり、保存・活用していくためにはどのような課題があるのか、事例を研究している。
今回は八女市にある「丸林本家」について、「八女福島丸林本家保存機構」の北島力さんにお話を伺った。
八女市八女福島地区は、古い建物や歴史的に価値の高い建物が建ち並ぶ地区で、2002年に国から「重要伝統的建造物群保存地区」(=「重伝建地区」)にも指定されている。
八女福島地区にある丸林本家は明治時代の建物で、南棟(明治初期築)、中棟(明治中期築)、北棟(明治後期築)の3軒の建物(付属屋は除く)からなる。
建物のオーナーは市外に住んでおり、約20年前から空き家になっていたが、市民有志による「八女福島丸林本家保存機構」が所有者より管理委託を受け、「伝統的建造物群保存修理事業」(=「伝建事業」)の補助を受けるとともに資金募集等に取組み、2006~2007年にかけて修理を行った。

●保存機構メンバーが中心となって補修費用を調達
このケースは、丸林本家の所有者との管理委託契約の締結という全国でも珍しい取り組みを行っているので紹介したい。
まず、2006年4月に、建物が老朽化し、朽ちそうだった丸林本家を何とか再生したいと、市民有志が集まり、任意団体の八女福島丸林本家保存機構が発足した。
同保存機構の建築士に頼んで補修費の見積もりをしてもらったところ、資金が約7,000万円必要ということだった。
NPO法人であれば、銀行から2,000万円程の借金ができるのだが、任意団体なので、銀行からの貸し付けを受けることもできない。
また、国の重要文化財になると、行政からの補助が建物の外観や構造等修理にかかる工事費の8割の補助金(八女市の場合は伝建地区内の市指定の文化財も8割の補助。修理工事費の中で、通常の場合、建物の内部に係る費用―電気や水回り等の設備及び改修、建具類等―は補助の対象から外される。)を得られるが、この建物は未指定であった。
結局、八女市から伝建事業で2,880万円(補助の限度額があり、1棟960万円×3棟)の補助を受けられることになったが、残り約4,000万円の自己資金を集めなければならない状況になった。
そこで、自己資金を捻出するために、同保存機構は八女福島の町並みの町家群の保存に理解のある市民や友人・知人などの有志に呼びかけ会員を募った。
会員には一口30万円の借入金、一般には一口1万円の協賛金を呼びかけ、なんとか20人弱の協力者を得、目標の資金が集まったそうだ。
そうして、2007年、無事補修工事が完了し、現在、改修前から希望のあった会員が、町家カフェ・木工ギャラリー兼住宅・専用住宅として活用中である。(補修工事は、改修前から希望のあった会員に設計段階から要望を聞き、その要望に十分配慮された設計内容で行われている。)
建物の維持管理は、所有者と結んでいる前述の管理委託契約(期間は25年間、管理委託料は無料、固定資産税は同保存機構が負担)に基づき同保存機構が行っており、建物利用者からの毎月の利用収入によって、長期になるが年に1回借入金を返済しているとのことである。
なお、伝建地区の場合、伝統的建造物は保存に同意をすれば固定資産税は免除される。

●景観・建造物の保全の特異な例
丸林本家のケースは、建物の補修から活用に至るまでのプロセス及びその後の維持管理について、任意団体が、オーナーと管理委託契約を行い実行するという、非常に珍しいケースである。
重伝建地区内にある建物は行政からの補助が出るとしても、自己負担の資金は必要なわけで、3棟分とはいえ補修費の内の4,000万円という自己資金を集めるのは並大抵のことではない。
モチベーションは、文化遺産を後世に伝え残したいという使命感や価値のある景観と建物を守りたいという思い。
建物のオーナーでなくても、地区の文化遺産や価値のある景観や建物を守りたいという強い使命感や思い入れのある人がいれば、何らかのアクションが動きだし、周囲の人の共感を得ながら活動が広がっていくという好例だと思う。

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